多くのメリットがあるドライウォール。あなたも検討してはいかが?

ドライウォール工法ってご存じでしょうか。アメリカの住宅に採用されていて、気密性に優れた大壁をつくる工法です。ドライウォールにすれば、従来のクロス仕上げにはないさまざまなメリットも。家づくりを考えているあなた、この機会にドライウォール工法の採用を考えてみませんか?

1.ドライウォール工法とは?

ドライウォール工法とは、内装壁や天井などを構成する下地材に、石こうボードを貼り、継ぎ目(目地)にジョイントテープやパテを施すことで、強固で気密性の高い大壁をつくる工法のことです。
アメリカの映画で、ローラーを使い、ご家族で壁や天井をペイントで塗装するシーンをご覧になったことはありませんか?あのときの壁や天井がドライウォールです。
「素人だと、うまく仕上げることができないのでは?」と疑問に思った方も多いでしょう。でも、素人でもきれいに仕上げるのことができるのがドライウォールなのです。アメリカの住宅の大半はドライウォールで、北米を中心に世界各国で普及し、一般的に施工されています。

1-1.ドライウォールと目地処理の目的

ドライウォールと目地処理の目的は、以下の3点に集約されます。

  1. 目地を補強して、ひび割れを防止する。
  2. 耐火・防火性、断熱性、遮音性を向上させる。
  3. 目違い(ズレ)・すき間をなくし、平滑な面を形成する。

日本の内装業者の多くは、下地処理の際に3番目だけを考えている方が多いようです。1と2は簡略化した処理をしている例が多いといわれます。
しかし、どんなに高級なペイント・クロス・塗り壁で施工しても、強固な下地をつくらないと、時間の経過とともに不具合が出てくることに。最初は同じように見えても、何年かあとに「ドアの上にひび割れが」といった具合に、問題が必ず出ててきます。
こうした問題を解決する方法がドライウォール工法です。同時に、耐火・防火性、断熱性、遮音性も向上するとなれば、「いうことなし」ではないでしょうか。

1-2.使用する石こうボード

ドライウォール工法に使用する石こうボードは、側面形状が通常のベベルエッジ(Vカット)ではなく、大きく斜めにカットされたテーパーエッジ(4~8cmにカット)のボードを使用します。大きさは、輸入住宅などに多いインチモジュールで、通常、4フィート×8フィートのテーパーボードです。
石こうボードは、専用のくぎやスクリューなどの留付け材で設置します。また、目地や突き付け(ホゾや仕口を設けず、2つの材木を突き合わせて、くぎや接着剤で接合する方法)は、専用の目地処理材と工具を使い補強処理。その結果、気密性の高い室内空間をつくり、建築物に要求されるさまざまな性能を高めることが可能です。
目地だけでなく、入隅(2つの面が入り合ってできる内側の角)や出角( 反対に出っ張った角)までも、強固な下地を形成することができます。

2.ドライウォール工法のメリット

ドライウォール工法は、アメリカでは30年以上の歴史があります。日本で一般的なクロス仕上げの内装に比べて、比較にできないほどのインテリアの質感とグレードアップが可能です。
メリットについては、詳しい説明は不要でしょう。整理して、ひと言ずつで説明します。

  • 気密性に優れる。
  • ひび割れが入りにくい。
  • 平面性に優れる。
  • 局面・曲線も自由自在。
  • 繊細な下地は、質の高い塗装仕上げを可能に。
  • 豊富なコーナー部材によって壁面を構成できる。
  • 地震に対する強度が高まる。
  • 防音・防炎・断熱の効果が高まる。
  • 水性ペイント仕上げだから子供の落書きもOK(上から再度塗るだけで済む)。
  • 手あかの汚れも拭き取り簡単。
  • 容易に自分で補修や模様替えができる(塗装仕上げ)。
  • 集合住宅などでメンテナンスが容易(塗装仕上げ)。
  • 部分補修が簡単にできる(塗装仕上げ)。
  • 大きな傷やペットの引っかき傷も手直しはラクラク。
  • 照明の使用によって、魅力的な室内を演出できる。
  • テクスチャーが無限(塗装仕上げ)。
  • 塗り替えはパパの日曜大工で可能(クロス仕上げより低コストでリフォーム可能)。
  • リフォーム(塗装仕上げ)の際に廃材が出ない。

3.ドライウォール工法のデメリット

ドライウォール工法には、デメリットというよりも、避けては通れない課題があります。依頼する場合は、信頼できる業者選びが必要です。

3-1.熟練職人が少ない

ドライウォール工法の施工には、熟練した職人(ドライウォーラー)による施工が必要不可欠。高精度のパテ処理が必要なため、職人のレベルによって大きく品質が異なってくるからです。ところが、残念なことに、熟練した職人は、日本ではまだまだ少ないという現実があります。
ドライウォールで施工したものの、クレームが出ることも決して少なくないようです。完成後はきれいに仕上がったように見えたものの、数か月すると、クラックが発生したりします。原因はズバリ、業者の知識不足と職人さんの技能・経験不足です。
ドライウォールの成功はすなわち、熟練した職人の技しだいといえるでしょう。

3-2.費用が高い?

ドライウォール工法には、高精度のパテ処理が必要です。このため、工程がクロスの2~3倍に。最後のペイント仕上げまでは、10日間くらいは必要です。
その結果、施工単価が高くなるといわれます。しかし、品質に優れていることは確か。高品質のものを選ぶか、費用をできるだけ安く抑えるかは、あなたの判断しだいです。

4.施工の流れ

ドライウォール工法の施工には、石こうボードの下地、種類、厚さ、貼り方、留めるビスの長さ、ビスの間隔、ビスの締め方、パテの種類、そして職人の熟練技術が必要です。石こうボードを貼り終わってからの大まかな施工の流れを見てみます。

  1. ジョイントテープ貼り付け:バズーカ(パテとジョイントテープを自動的に施工する機械)を使い、石こうボードの継ぎ目の部分に、ジョイントテープを貼り付けます。
  2. ジョイント部分仕上げ:ジョイントテープの貼り付けが完成したら、フラットフィニッシャーを使い、ジョイント部分の仕上げをします。
  3. アウトサイドコーナー仕上げ:パテを塗ってアウトサイドコーナーを仕上げます。壁の角の部分は、コーナービートを取り付けることで丸くすることが可能。石こうボードを留めているビスの穴も、パテを使って処理します。
  4. ペーパー掛け:ジョイント部分を平滑にするため、ペーパー掛けをします。
  5. テクスチャー吹き付け~完成:テクスチャーを吹き付け、最後にローラーで仕上げの塗装をして完成です。水性の塗装なので、接着剤を使うクロスと違い、健康にも問題はありません。

5.業者選びの注意点

繰り返しになりますが、ドライウォール工法の成否は、ドライウォーラーの技能にかかっているといって過言ではありません。
施工には、バズーカを始め専用の重たい専用機械が必要です。これらの機械を、自分の手足のように自在に使いこなさいと、クオリティの高いドライウォールを実現することはできません。ところが、自在に使いこなせる職人は、国内では極めて少ないといわれます。
技能を維持するには、前提として何よりも体力が必要です。日本でドライウォーラーとして評価されている方の中には、仕事のあとにジムへ通いバーベルを上げて、体力を維持する努力をしている方も。それほどたいへんな仕事です。
業者選びは、安さというよりも熟練技能をもつ業者であることを第一にしてください。また、海外のドライウォール職人に依頼する場合もあるようですが、十分な注意が必要です。信頼できる人からの紹介か、過去の施工現場を見せてもらった方がいいでしょう。

6.まとめ

日本でも少しずつ普及しているドライウォール工法を紹介しました。家づくりを考えている人は、ぜひ参考にしてください。
ドライウォール工法には、多くのメリットがありますが、課題もあります。比較しながら、検討してみてはいかがですか?
強調したい点は、ドライウォール=熟練職人の技という点。いい業者、いい職人に出会って、いい家づくりをしていただくことを願っています。