
鉄筋が腐食する理由や対処法を解説!腐食を放置してはいけない理由は?
「鉄筋コンクリートの表面にサビが浮いてきた」「鉄筋コンクリートの表面がボロボロと崩れてきた」といった悩みがある人は多いと思います。 それは、鉄筋の腐食が原因かもしれません。鉄筋コンクリートの腐食をそのままにしておくと、建物に深刻な被害が出る恐れもあるでしょう。今回は、鉄筋コンクリートが腐食する原因や対処方法を紹介します。
- 鉄筋の基礎知識
- 鉄筋コンクリートの腐食について
- 腐食を放置するとコンクリートは崩壊する
- 鉄筋コンクリートは定期的な検査が大切
- 鉄筋が腐食した場合の対策方法
- 鉄筋コンクリートの検査や補修をしてくれる業者の選び方
- 鉄筋の腐食に関するよくある質問
この記事を読めば、鉄筋コンクリートを補修するタイミングも分かるでしょう。鉄筋コンクリートの劣化が気になってきた人は、ぜひ読んでみてくださいね。
1.鉄筋の基礎知識
はじめに、鉄筋の特徴や使用場所、鉄筋コンクリートのメリットなどを紹介します。
1-1.鉄筋は細く伸ばした鉄の棒
鉄筋は太さ10~50㎜、長さ3~15mの細い鉄の棒のことです。コンクリートの建物を作る際、補強のために芯として使われることが多いでしょう。鉄筋コンクリートとは、鉄筋を芯に入れたコンクリートのことです。
1-2.鉄筋コンクリートはあらゆる高層建築に使われている
コンクリートだけでは引っ張る力に弱いので、コンクリートだけでマンションなどの建造物を作ることはほとんどありません。ですから、高層ビルなど大きな建物は鉄筋コンクリートが使われていると考えます。
1-3.鉄筋は単独で使われることはほとんどない
同じ鉄の建造物でも、鉄骨は単体で梁(はり)や柱に使われる太い棒状の鉄です。一方、鉄筋は単独で建築資材として使われることはほとんどありません。コンクリートの芯として使われます。
2.鉄筋コンクリートの腐食について
この項では、鉄筋が腐食する原因や腐食の程度について紹介します。
2-1.鉄筋コンクリートは中性化によって腐食する
鉄筋コンクリートの内部は高アルカリ性に保たれ、鉄骨の表面に緻密な不動態被膜を形成しています。不動被膜とは、腐食作用に抵抗する酸化被膜のことです。しかし、年月がたつにつれて空気中の炭酸ガスの作用により、コンクリート内部の水酸化カルシウムが炭酸カルシウムとなり、アルカリ性から中性へと変化していきます。これを「コンクリートの中性化」といい、表面からだんだんと内部へと進行していくのです。中性化が鉄筋まで進むと不動態被膜が破壊され、酸素や水の影響で鉄筋がさびてきます。これが腐食の始まりです。
2-2.鉄筋コンクリートは塩害で腐食する
何らかの原因で鉄筋コンクリートが長期間塩分にさらされた場合や、コンクリートを作るために海砂が使われた場合、砂に含まれた塩分で鉄筋がさびることがあります。これが塩害による腐食です。
2-3.鉄筋はさびると膨張する
鉄筋は、さびるともとの体積の最大2.5倍ほど膨張します。この膨張圧力でコンクリートを内部から破壊していくのが腐食の弊害です。コンクリートの表面にさび色の水(さび汁)が出てくるようになると、耐久性が著しく低下します。
3.腐食を放置するとコンクリートは崩壊する
鉄筋の腐食を放置しておくと、以下のような行程で腐食が進んでいきます。
- 潜伏期:コンクリートの中性化が進む、もしくは塩害により鉄筋表面の塩化物イオン濃度が腐食発生限界濃度に達するまでの期間
- 進展期:腐食によってコンクリート表面にひび割れが生じる
- 加速期:ひび割れによってさらに鉄筋の腐食が進む
- 劣化期:腐食が進んだことにより、コンクリートの耐久性がいちじるしく落ちこむ
劣化期になると、コンクリートの落剝が起こるようになり、やがて崩壊してしまうでしょう。
4.鉄筋コンクリートは定期的な検査が大切
鉄筋コンクリートの腐食は、ひび割れが生じるまで見た目では分かりません。そのため、以下のような検査を行い腐食の可能性があるかどうかや、腐食の度合いを調べることが大切です。
- 中性化試験:コンクリートが中性化しているかどうかを調べる試験。PH11以下ならば中性化が進んでいる
- 塩化物含有量試験:鉄筋コンクリートの中に塩化物がどのくらい含まれているかの試験
- 目視・打音調査:経験者がコンクリートの表面を目視したり、ハンマーでたたいて音を聞いたりしてコンクリートの状態を確かめる
- ひび割れ調査:クラックスケールを用い、ひび割れの長さや幅を検査する
このような調査は専門の会社が行っているので、定期的に依頼しましょう。
5.鉄筋が腐食した場合の対策方法
この項では、鉄筋が腐食が発覚した場合の対処方法を紹介します。
5-1.中性化対策は再アルカリ化工法を行う
中性化が進んだ鉄筋コンクリートを修繕する方法の1つが、再アルカリ化工法です。これは、アルカリ性溶液をコンクリート内部に電気浸透させることで鉄筋コンクリートの再アルカリ化を行う方法になります。ひび割れや浮きなどが生じていない場合は、これだけで補修完了です。
5-2.塩害対策は脱塩工法を行う
塩害によって腐食が進みつつある場合は、脱塩工法を行います。これは、塩化物イオンをコンクリート内部から外部へ移動させる工法です。塩電解質溶液を含んだ仮設陽極材をコンクリート表面に設置し、仮設陽極材側から電流を流せば、電気遊泳によって塩化物イオンはコンクリートから仮設陽極材へ移動します。
5-3.ひび割れや浮きが生じている場合はコンクリートを注入する
ひび割れや浮きがコンクリートに生じている場合は、コンクリートを注入して浮きやひび割れを埋める工事が行われます。そうすれば、腐食が食い止められるでしょう。
6.鉄筋コンクリートの検査や補修をしてくれる業者の選び方
コンクリートの外壁や建物が腐食した場合、検査や補修してくれる業者はたくさんあります。補修方法は前項でご紹介したもの以外にもあり、独自の検査方法や補修の値段の安さをウリにしている業者もいるでしょう。しかし、値段や補修の速さより、口コミや実績、アフターフォローの手厚さで業者を選んだほうが満足度は上がります。まずは見積もりをとってみて、業者の対応を見ましょう。検査内容や補修方法をほとんど説明せず、「うちが一番安い」「とにかく任せてください」と宣伝する業者より、見積もりの内訳や検査内容を詳しく説明してくれる業者を選んだほうがいいですね。
7.鉄筋の腐食に関するよくある質問
この項では、鉄筋の腐食に関する質問を紹介しましょう。
Q.鉄筋の腐食を確かめる検査は法律で義務づけられていますか?
A.腐食に限定した検査は法律で義務づけられてはいません。しかし、定期的な検査は大切です。
Q.マンションの場合も鉄筋の腐食に関する検査や補修は必要でしょうか?
A.はい。もちろんです。十数年に一度、大規模改修で検査を行ったり補修したりします。
Q.腐食を放置していて建物が崩壊した場合、管理責任を問われるでしょうか?
A.はい。問われる可能性が高いでしょう。
Q.腐食の検査や補修はどのくらいの期間で行えばいいですか?
A.建物の立地条件や環境によって異なりますが、10年に1度程度の割合で行うのが一般的でしょう。
Q.腐食の検査や補修にはどのくらいの時間がかかりますか?
A.建物の大きさや腐食の範囲などによっても異なるので、業者によく確認しましょう。一般的な補修ならば1週間以内におわることが多いと思います。
まとめ
今回は、鉄筋が腐食する原因や影響、対処方法を紹介しました。どんな鉄筋コンクリートでも経年による劣化は避けられません。鉄筋は腐食するものだと考え、定期的に検査や補修を行いましょう。劣化が進んでいなければ補修も簡単なもので済むはずです。補修をせず放置してはいけません。