原状回復のポイントを知ろう!店舗退去時に知っておく3つのこと

店舗退去時の原状回復にはどのようなポイントがあるのでしょうか。原状回復をめぐる過去の傾向をまとめてみると、住宅用賃貸と事業用賃貸には大きな違いがあることが分かります。テナントやオフィスとして借りた物件を退去する場合には、どのような原状回復義務があるのでしょうか。

店舗を長年使用していると内装設備の状態も変化してきます。そういったものの修繕工事を行う費用も支払う必要があるのでしょうか。後からトラブルにならないためにも、原状回復について知っておきましょう。

  1. 原状回復のガイドライン・義務
  2. 原状回復についてよくあるトラブル
  3. 原状回復にかかる費用

1.原状回復のガイドライン・義務

店舗として物件を借りていた場合、退去する際の原状回復義務については一般住宅とは異なります。ガイドラインや義務についてはどうなっているのでしょうか。

1-1.原状回復について

「そもそも原状回復とは何か」と疑問に思う人は多いでしょう。民法では「当事者の一方がその解除権を使用したときは、各当事者は、その相手方を原状に回復する義務を負う」と決まっています。つまり、退去する際には契約の状態まで回復する義務があるということです。

基本的な考え方としては「新設・増設したものは撤去する」「移設のものは入居前の状態に戻す」というものがあります。使用していたテナント物件を契約当時の状態に戻し、オーナー側が合意することで初めて退去が終了するのです。

1-2.原状回復のガイドラインとは?

退去時の敷金返還トラブル、原状回復トラブルを未然に防ぐために、国土交通省はガイドラインを公表しています。ただし、ガイドラインはあくまでも指針であり、法的強制力はないのです。つまり、契約内容などは「個別に判断決定」すべきとされ、当事者間の契約を優先しています。

しかし、敷金返還や原状回復のトラブルにガイドラインを活用することは可能でしょう。その理由は、過去の判例や実務を考慮した上で作成されたものであるため。最終的に裁判に発展した際には、ガイドラインに近い形で決着がつくことが多いでしょう。

1-3.原状回復の内容

では、ガイドラインに基づく原状回復の内容を確認しておきましょう。まず、通常使用を超えるような汚損、破損、そのほかの汚れや損耗については、借り主の負担としています。当然、入居者として掃除などを怠ってできたカビ、シミなどの汚れ損耗についても、借り主の負担となるのです。問題は、借り主に原状回復の義務がない場合。原状回復とは「通常使用で起こる消耗分を回復することではなく、故意・過失による損耗を回復する」という意味なのです。つまり、通常使用によって起こる消耗の修繕費用については、借り主が負担する義務はありません。

原状回復とは、新居のようにして返せということではないんですね。
はい。経年劣化は借主の責任ではありません。

2.原状回復についてよくあるトラブル

原状回復のガイドラインが存在していても、敷金返還や原状回復にかんするトラブルは後を絶ちません。店舗は事業用賃貸となるため、やはり住宅と違う状況がある点は理解しておく必要があるでしょう。

2-1.店舗に特有の使用状況がある場合

飲食店で厨房(ちゅうぼう)を設置しているようなケースでは、熱や水蒸気が多く発生する環境にあります。その分、建物の傷みも激しくなるでしょう。お客さんの出入りによってフローリングや壁などが通常よりも激しく傷むこともあります。状況に応じた判断が非常に難しくなってくるでしょう。一般的には、通常の使用によるものと判断できない場合、手入れ不足であると判断できる場合は、借り主に原状回復義務が生じます。

  • タバコのヤニや臭い
  • 天井に直接つけた照明器具の跡
  • 誤った使い方によって生じた設備の破損
  • カーペットに飲みものをこぼしたことによるシミやカビ
  • 床のサビ跡
  • 油汚れ
  • 結露を放置したことにより拡大したカビ
  • クーラーの水もれを放置したことによる壁や天井の腐食

2-2.契約で「原状回復の特約」が定められている場合

貸し主と借り主の合意により、ガイドラインとは別に特約を定めることができます。民法上、原則として契約内容を当事者間で自由に決めることができるのです。店舗など事業用の賃貸借契約では、借り主の原状回復義務の範囲を広くする特約条項が入ってきていることが多くなっています。

契約書の内容をしっかりと確認しておかなければ、トラブルに発展してしまうでしょう。一般住宅の場合は、借り主の方が立場は弱いことが多く、消費者として保護されるケースが多くなっています。しかし、店舗などの事業用物件の場合は、貸し主と対等な関係だと判断されることが多く、特約が有効となるケースがあるのです。そのため、住宅に比べて大きなトラブルに発展しやすいでしょう。

2-3.実際にあったトラブル例

では、店舗として使用した物件の原状回復をめぐり、実際にあったトラブル例をいくつかご紹介します。

  • カーペットの汚れは一部分であるのに、全面張り替えの見積もりがきた
  • 交換したばかりの蛍光灯も含めてすべて交換と言われた
  • 繁華街にあるテナントビルであるため、工事に制限があることを理由に割高になっている
  • 借りたときは壁やカーペットが新品ではなかったのに、退去時の見積もりでは「すべて新品に交換」となっている

上記のようなトラブルが発生した場合は、契約内容と使用状況をしっかりと確認した上で、貸し主と調整する必要がある場合がほとんどです。

店舗を退去する際、原状回復に関するトラブルが起こりやすいんですね。
はい。ですから、入居するとき原状回復の条件を細かく定めておくといいでしょう。

3.原状回復にかかる費用

最後に、原状回復にかかる費用についてご紹介します。少しでも費用を抑えるためには、一体どうしたらよいのでしょうか。

3-1.店舗の原状回復工事

店舗として使用していた物件を退去するにあたり、賃貸借契約に従って原状回復を行う義務があります。原状回復義務が免除されるのは、貸し主からの希望で契約を解除する場合だけ。実際にこのようなことはほとんどありません。原状回復には、看板や設備の撤去、床・壁・天井の修繕など内装全般から設備関係に至る工事が含まれるのです。

貸し主が原状回復工事業者を指定している場合は、まず指定工事業者による原状回復の見積もりを出してもらいましょう。指定業者による見積もりは相場より高い場合が多いため、貸し主に他社からの見積もりを取りたい旨を伝えてみてください。貸し主が了承した場合は、一括見積もりを依頼して複数業者からの見積もりを比較してみましょう。

3-2.保証金について

店舗の賃貸契約をした際、入居時に多額の保証金を支払っているはずです。この保証金は通常、賃貸借契約が終了したときに、原状回復工事費用を差し引いて返還されます。返還時期は物件によって異なるため、いつ頃になるか確認しておきましょう。

また、契約書に保証金の償却についての記載がある場合は、何%なのかも確認してください。円満に契約を解除できるのであれば、償却額の%を下げてもらうことができる場合もあるでしょう。

原状回復には費用がかかるんですね。
はい。保証金から出してもらうことも可能ですが、追加費用がかかることもあります。

まとめ

店舗の退去時には、原状回復についてしっかりと知っておく必要があります。知らないと損をしてしまうこともあるため、退去が決まったら早めに知識を集めておきましょう。そして、気持ちよく物件を後にしてください。