種類が多い日本の住宅工法! それぞれのメリット・デメリットは?
住宅を建築するときや購入するときの悩みの1つは、どんな工法の住宅にすればいいのかという点でしょう。特に一戸建て住宅では、さまざまな工法があるので、迷ってしまいまうものです。どの工法が一番よいということではありません。でも、それぞれの工法にメリットとデメリットがあるのは確かです。工法の種類や特徴を知って、マイホーム選びの参考にしてください。
1.日本の住宅
2014年の1年間に、日本全国では89万戸以上の住宅がつくられました(国土交通省『住宅着工統計調査』より)。約130万戸がつくられた時期に比べると減少していますが、それでも膨大な住宅が毎年つくられているといえます。
住宅は、持ち家、貸家、分譲住宅(マンション、一戸建て)の3つ。マイホームならば、持ち家か分譲住宅になります。一戸建てにするかマンションにするかは、あなたの考え方しだいです。
住宅工法というと、マンションの場合、鉄筋コンクリート造(RC造)・鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)・鉄骨造(S造)の3つに大分類できます。厳密にはRC造の中でも、ラーメン構造、壁式構造というよう細分化。さらに、現場でコンクリートを流し込んでつくる工法と、工場で製作したプレキャストコンクリート製品を現場で組み立てる工法など、施工方法の違いもあります。ただ、基本的には3つの工法(構造)とご理解ください。
一方、戸建て住宅の工法は、少し複雑です。今回は、戸建て住宅の工法について紹介します。
2.主な住宅工法の種類
戸建て住宅の工法・構造は、大別すると木造、S造、RC造の3タイプ。さらに、次のよう細かく分かれます。
- 木造:軸組工法(木造軸組工法、木造軸組パネル工法)と壁式工法(2×4工法、木質パネル工法)
- S造:鉄骨軸組工法(軽量鉄骨造)と重量鉄骨ラーメン工法
- RC造:コンクリート現場打ち工法とプレキャストコンクリートパネル工法
これほど多くの住宅工法があるのは、世界の中でも、日本だけといえるでしょう。
3.代表的な5つの住宅工法
日本の代表的な戸建て住宅工法として、5つの工法を紹介します。それぞれの工法の特徴を押さえたうえで、建物の大きさや規模とコストとのバランスを考えて工法を選んでください。
3-1.木造軸組工法
古来、日本で採用されてきた伝統的な工法です。在来工法と呼ばれ、いまでも日本の住宅の8割程度は、この工法で建てられています。主流になっているのは、日本の気候風土に合っているからでしょう。木のぬくもりを感じられる住宅です。
木材で土台・柱・梁(はり)などの軸材を組んで骨組みを構成します。耐震性能は筋かいなどが負担。このため筋かいや壁の量やバランスが耐震を考えるうえで、とても重要になります。
メリット
- 立地や敷地条件に対して、間取り・外壁材料・屋根形状など、設計の自由度が高い
- 開口部が大きく取れ、増改築も容易にできる
- 2000年の建築基準法改正で、耐震性能も向上した
- コストも比較的安い
デメリット
- 構造的な指針が不明確なため、工務店や大工さんの技能の熟練度によっては、仕上がりや耐久性に差が出る(近年は、工場で木材を加工するプレカットが主流になり、現場では技能に左右されにくくなっています)
- 接合部の施工がよくないと、将来に不具合が出る心配がある
- 柱のない大空間などに対する設計の自由度は低い
- 床下や屋根裏の湿気やシロアリ対策が大切になる
木造軸組工法に耐力壁となるパネルを組み合わせたのが木造軸組みパネル工法です。木造軸組工法以上に耐震性能は向上します。
3-2.2×4(ツーバイフォー)工法
北米から伝わってきた工法です。材料寸法や釘(くぎ)などが規格化された合理性があります。北米の住宅の9割以上はこの工法です。2インチ×4インチの部材でフレームを組み、合板などの板材で壁を構成、壁で建物を支える構造(枠組壁工法)になっています。
メリット
- 在来工法と比べて、1.5から2倍程度の耐震性能がある
- 合理的に標準化された工法なので、大工さんの技量に影響されずに、品質が安定した家をつくることができる
- 高気密・高断熱にしやすい
デメリット
- 構造体が壁のため在来工法よりも構造の制約がある
- 壁に大きな開口部を設けにくい
- 増改築の自由度も在来工法より低い
- 在来工法と同様に、シロアリ対策が必要になる
2×4工法から派生した工法として、木質パネル工法があります。複層・強化した木質パネルで耐力壁を構成する工法です。
3-3.鉄骨軸組工法(軽量鉄骨造)
柱や梁(はり)などの構造体を、厚さ6mm以下の鋼材で構成しています。工業製品で大量生産を可能にした工法です。
メリット
- 工業化することで、品質が安定し、大量に供給ができる
- 耐震性も高い
デメリット
- 規格化されているので、自由なデザインの家づくりができない
- 結露がしやすい
- 防音性能に劣る面がある
3-4.重量鉄骨ラーメン工法
オフィスビルなどをつくるのと同じ工法です。厚さが6mmを超える鉄骨を使用します。間取りの自由度が増し、大空間をつくることが可能です。ビル形式の併用住宅やマンションなどで採用されています。
メリット
- 狭い敷地でも施工が可能で、密集市街地で有効な工法である
- 設計の自由度が高く、柔軟に間取りができる
デメリット
- 建物が重くなるので、基礎部分を強固にする必要がある
- コストは割高になる
3-5.鉄筋コンクリート構造(場所打ちコンクリート工法)
鉄筋を組み、型枠で囲ってコンクリートを流し込み、柱・梁・壁・床をつくります。コンクリートと鉄の長所を生かした強固な構造です。ラーメン構造と壁式構造を、用途などに応じて使い分けることができます。
メリット
- 耐久性・耐震性に優れた構造になる
- どんな形でもつくれるので、自由なデザインの住まいができる
デメリット
- 鉄筋や型枠工事が伴い、価格が高くなる
- 現場でコンクリートを施工するため、品質管理が難しく、施工品質にバラツキがある可能性がある(この問題を解消したのが、プレキャストコンクリート工法)
- コンクリートは熱を通しやすく、ためる量も多いので、夏は暑く冬は寒くなりがち(解決するのには、外断熱工法にする)
4.マイホームづくりの方法
マイホームをつくるときは、住宅工法選びと同時に、依頼先も悩むところ。3つの方法を紹介します。どこに依頼するのが一番いいというわけではありません。あなたの希望をかなえてくれて、信頼できる相手に依頼してください。
4-1.建築家(設計事務所)に依頼する
つくりたい家のイメージを建築家に伝えて、設計をしてもらいます。自分が理想とする家づくりという意味では、最もふさわしい方法でしょう。施工する会社は、建築家を通じて選ぶこともできますし、ご自分で知り合いの会社に依頼しても構いません。
建築家は、工事中も第三者の立場で品質をチェックしてくれるので安心です。ただし、設計費や工事の監理費用が伴うので、その分を含めて予算を確保する必要があります。
4-2.ハウスメーカーに依頼する
比較的安く住宅をつくることができる方法です。ハウスメーカーが分譲する住宅にお気に入りがあれば、購入する方法も。工業化された材料を使う場合が多く、品質面では安心できます。
ただし、規格化された住宅が多いのが実情です。自由な家づくりをするには制約もあり、こだわりの住まいにしたい方には、あまりおすすめはできません。
4-3.地元の工務店に依頼する
ご近所にある工務店に依頼するのも1つの方法です。歴史があり実績も多い工務店では、ショールームやモデルハウスがあります。どんな家づくりをしているかを実際に確かめられるので、ぜひ見学してみてください。相談にも気軽に応じてくれますし、依頼するときの参考になります。
耐久性や安全性など、こだわりの家づくりをしている工務店ならば、依頼する方も安心できるでしょう。さらに、工務店に依頼するときのポイントの1つは、自由設計に対応できるかという点です。間取りや外観など、あなたのこだわりを実現してくれる工務店に依頼してください。
まとめ
マイホームの建築や購入を考えている人のために、戸建て住宅工法の種類を紹介しました。5つに分類しています。
- 木造軸組工法(在来工法)
- 2×4工法
- 鉄骨軸組工法
- 重量鉄骨ラーメン工法
- 鉄筋コンクリート工法(場所打ちコンクリート工法)
実は上記の5つ以外に、丸太組工法(ログハウス)もあります。リゾート地などにある木造による住宅工法です。もしご興味がありましたら、ご自分で調べてみてください。
また、実際の家づくりの方法として、3つの方法も紹介しました。建築費用は、建物の階数や規模と建築工法の組み合わせによって決まります。あなたの条件に一番ふさわしい住宅工法を選び、マイホームを実現してください。