塗装工事の種類とは? 工法・塗料・業者の選び方などを詳しくご紹介

塗装工事にはさまざまな工法や塗料の種類があり、一般の人には分からない点が多いと思います。疑問を抱えたまま契約書を交わすのは、不安に感じることもあるでしょう。あらかじめ、塗装工事について知識を身につけておくことが大切です。塗装工事を依頼する業者選びについても、併せてご紹介します。

  1. 塗装工事にはどんな工法があるのか?
  2. 塗装工事の目的とは?
  3. 塗装工事に使われる塗料の種類とは?
  4. 塗装工事の手順と業者選びについて
  5. 塗装工事でよくある質問

塗装工事は、目的を明確にして行うのが理想です。目的に合った工法や塗料を選ぶ際の参考にしてください。

1.塗装工事にはどんな工法があるのか?

塗装工事の主な工法をご紹介します。施工箇所や範囲によっても変わるのが特徴です。

1-1.吹き付け

吹き付けは、噴射機を使い、広範囲の塗装を一気に仕上げる工法です。工事期間が短縮できるメリットがあります。しかし、噴射機を使う際に塗料が飛散する場合や、凹凸のある部分の塗装が不十分になってしまう場合があるため、ほかの工法と併用するケースが多いでしょう。噴霧時に飛散する分、塗料を余計に使うので、塗料の代金がかさむ場合があります。

1-2.ローラー

ローラーは、塗料を浸(ひた)したローラーで塗り上げる工法です。1回に塗ることができる範囲が広いため、素早く塗装を終えたい場合に便利でしょう。とはいえ、細かな部分にはローラーが入り込めないので、道具の使い分けが必要です。また、気泡が発生する場合もあります。手軽で低コストなのが魅力です。

1-3.コテ

コテは、セメントに塗装をする場合に使われることが多い工法です。下地処理に使われることもあります。ほかの工法と併用して、オリジナリティの感じられるデザインに仕上げられるのがメリットです。とはいえ、左官職人の技術力が問われるため、職人ごとに仕上がりは差が出る場合があります。技術を要する分、ほかの工法より若干高値になるケースもあるでしょう。

1-4.ハケ

ハケは、筆に似た形状をしており、細部までしっかり塗ることができるのがメリットです。狭い範囲の塗装には適しています。しかし、広範囲の塗装には不向きです。仕上げとして使われることが多いでしょう。部分的に塗る場合に用いるため、さほど高額になることはありません。

2.塗装工事の目的とは?

塗装工事は、どのような目的で行われることが多いのでしょうか? 塗装の目的と、それぞれのメリット・デメリットを併せてご紹介します。

2-1.一般塗装

塗膜の耐用年数は、塗料の種類によって差はあっても、8〜10年が目安となっています。塗膜の劣化により、塗り替えをする場合は、一般塗装が必要です。塗り替えで、サビ・腐食・害虫による被害などを防ぐ効果があります。とはいえ、一般塗装は建物全体を塗り替えるケースが多いため、費用がかさむのがデメリットです。施工範囲・塗料の種類などによって、費用は変わってきます。

2-2.防水塗装

防水塗装は、屋上やベランダなど、浸水被害が起こりやすい場所に行うものです。気温や天候の変化にも柔軟に対応できる弾性があり、厚みのある塗膜に仕上げる工法となっています。ウレタン塗料を用いる場合が多く、1平方メーターあたりの塗料単価は4,500〜7,000円です。下地処理・人件費・材料代などは別途かかります。雨漏りなどが起きている場合、防水塗装だけでは補うことができないのがデメリットです。雨漏りの原因を究明してから、修繕や塗装を行いましょう。

2-3.遮熱・断熱塗装

遮熱・断熱効果のある塗料を使った塗装は、省エネ効果が得られるのがメリットです。太陽光の熱を反射し、建物の内部が高温になるのを防いでくれます。また、断熱塗料を用いることで、室温低下を抑制し、年間をとおして快適な環境を作ることができるのです。結露対策として導入される場合もあります。ただし、一般塗装に比べて塗料が割高で、建物全体に塗装を行う場合、高額な費用になる可能性が高いでしょう。

3.塗装工事に使われる塗料の種類とは?

塗装工事に使われる塗料は、さまざまな種類があります。それぞれの特徴・メリット・デメリットを見ていきましょう。

3-1.アクリル塗料

アクリル塗料は、1平方メーターあたり1,400〜1,600円と単価が安いのがメリットです。しっかり密着し、速乾性があります。しかし、耐用年数が5〜7年と短めで、頻回な塗り替えを要するのがデメリットでしょう。また、臭気が強いため、工事期間中は臭い対策に注意しなければなりません。

3-2.ウレタン塗料

ウレタン塗料は、ひと昔前までに主流となっていた塗料です。近年は、ウレタン塗料より耐久性が高いとして、シリコン塗料が選ばれるケースが目立ちます。耐用年数は、8〜10年が目安です。アクリル塗料より単価が高くなり、1平方メーターあたり1,700〜2,200円となっています。塗膜が柔らかく、さまざまな場所に使えるのがメリットです。防水塗装時に使うものと、外壁などに使うものは異なるので注意してください。

3-3.シリコン塗料

シリコン塗料は、汚れの付着・カビや藻などの発生を防ぐ効果があります。カラーバリエーションが豊富で、色落ちしにくいのもメリットです。耐用年数はメーカーによって差があり、8〜15年となっています。塗料の単価は、1平方メーターあたり2,500〜3,500円です。シリコン塗料の品質はメーカーや施工業者ごとにバラつきがあるため、高品質なものを見極めるのが難しいデメリットがあります。

3-4.フッ素塗料

フッ素塗料は、20年前後も塗膜の性能を維持できるのがメリットです。防水性もあり、光沢を与えられるのも魅力となっています。汚れ防止・紫外線対策などを整えたい場合に適しているでしょう。塗料の単価は、1平方メーターあたり3,800〜4,800円と高値であるため、主に事業・商業用のビルなどの塗装工事で使われています。

3-5.遮熱・断熱塗料

遮熱・断熱効果のある塗料は、15〜20年と耐用年数が長めのものもあります。省エネ効果を意識している場合におすすめです。自治体によっては、塗装工事に助成金が出る場合もあります。ただし、単価が高く、1平方メーターあたり5,000〜5,500円です。光熱費を削減できる分、初期費用はかかると考えておきましょう。

4.塗装工事の手順と業者選びについて

塗装工事の手順や、良質な業者の選び方を覚えておきましょう。

4-1.塗装工事の流れ

塗装工事は、以下の流れに沿って行います。

  1. 現地調査
  2. 見積もり(複数の業者から見積書を出してもらうこと)
  3. 契約して施工日時を決める
  4. 劣化箇所を必要に応じて補修する
  5. 下地処理(塗装面を滑らかにするのが目的)
  6. 養生(塗料の飛散を防ぐため)
  7. 下塗り(塗装面の材質などを考慮して塗料を選定。サビ止めなどを施す場合もある)
  8. 中塗り(下塗りの乾燥後に行う。中塗りは塗膜の強度を高めるのが目的)
  9. 上塗り(上塗りで塗膜を美しく仕上げる。ムラなどが起こらないよう、均一に塗料を伸ばすことが大切)
  10. 塗料をしっかり乾かす
  11. 施工箇所の点検
  12. 養生を取り外す
  13. 塗装工事完了

4-2.見積時の対応をしっかり見て業者を決めること

業者の作業に対する姿勢は、見積時の対応に現れます。質問にもスムーズに受け答えができ、塗料の種類や必要な修繕など、的確な提案ができる業者を選びましょう。知識や実績が豊富な業者であれば、塗装後の仕上がりも納得できるはずです。

4-3.見積書は熟読すること

見積書は、複数の業者から出してもらってください。作業内容・塗料の単価・人件費・修繕費などが細かく明記されていることも大切なポイントです。大まかな費用だけを記載する業者は、費用の水増しや手抜き工事なども起こり得ます。

4-4.アフターフォローの有無と補償範囲を確認する

塗装工事後にトラブルが起きた場合でも、アフターフォローがしっかり整っている業者なら安心です。保証期間内であれば、無償で対応してくれる場合があります。保証期間と補償される範囲を確認してください。

5.塗装工事でよくある質問

塗装工事に関する質問を集めました。

Q.塗装工事を考えるべきタイミングとは?
A.塗料の耐用年数を目安に考えてみましょう。耐用年数が10年程度の場合、8年を過ぎたころから劣化を感じるものです。耐用年数を迎える前に点検を受け、早期に塗装工事をすることが、美観を維持するための大切なポイントとなります。

Q.塗装工事にはどのくらいの期間がかかるのか?
A.塗料の種類や施工範囲によって差があります。一軒家全体を塗装する場合、10日〜2週間程度を見ておきましょう。事業・商業用ビル・マンションなどの場合は、数か月を要する場合もあります。

Q.塗装費用を修繕費として減価償却できるのか?
A.できる場合もあります。劣化部分を修繕し、元の状態に戻す工事をしている・高額な費用をかけていないという2点に該当する場合、修繕費として減価償却が可能です。ただし、塗装費用を減価償却するときは、建物に応じた法定耐用年数に準じて算出します。法定耐用年数は、国税庁のホームページを参照してください。

Q.美観や機能向上を目的に塗装工事をした場合、どの勘定科目にあてはめられるのか?
A.修繕費として認められないため、資本的支出に該当します。耐久性を上げるために張り替えを行った場合も同様です。高額な費用をかけて塗装工事をした場合も、資本的支出とみなされます。

Q.訪問営業の業者は危険なのか?
A.訪問営業の業者は、高額請求などのトラブルが多くなっています。利用しないほうが安全です。無用なリフォームや修繕を迫られるなど、予期せぬ事態も起こり得ます。断るとキャンセル料を取られる場合もあるため、注意が必要です。

まとめ

塗装工事は、工法や塗料にさまざまな種類があります。塗る範囲に見合う工法を選ぶだけでなく、塗装する目的を明確にし、適切な塗料を決めることが大切です。また、美しくしっかりした塗装をしてもらうためには、技術力が高い業者に依頼することもポイントになります。塗装工事を検討されている方は、工法や塗料の種類に加え、業者の選び方も覚えておきましょう。