中古住宅は耐震性能にご注意を! 購入前にすすめる10のチェックポイント

世界有数の地震国・日本。地震の揺れにどれだけ耐えられるかを表す能力を、耐震性能といいます。特に、中古住宅を購入する場合、重要になるのが耐震性能のチェック。というのも、築年数が経過した中古住宅の中には、耐震性能が低下しているものも予想されるからです。購入してから後悔する前に、専門知識がなくても事前にできるチェック方法を紹介しましょう。

1.建物の耐震性能

1-1.現在の耐震基準は1981年に

日本の建物は、建築基準法に基づいて建てられています。耐震性能については、1981年6月に大きく改正されました。新耐震基準と呼ばれ、現在の基準になっています。ポイントは大きく2つです。

  • 数十年に1度発生する震度5強程度の揺れには、ほとんど損傷しないこと
  • 数百年に1度発生する震度6強~7の揺れでも倒壊・崩壊しないこと

木造住宅では、耐力壁の量や耐力壁の倍率が見直され、耐震性能は大きく向上しました。

1-2.木造住宅は2000年にも改正

木造住宅に関しては、2000年6月にも改正がありました。ポイントは3つです。

  • 地盤調査で地耐力を調べ、地耐力に応じた基礎形状にしなければなりません。地耐力とは、地盤がどの程度の荷重に耐えられるか、また、地盤沈下に対してどれくらいの抵抗力があるかを示す指標のことです。
  • 柱や筋かいの接合部について規定されました。柱の足元や頭部の接合部が基礎や梁(はり)から引き抜かれて壊れるのを防ぐため、止め金物の種類などが具体的に明記されています。
  • 耐力壁の量の確保だけでなく、バランスよく配置することが求められるようになりました。壁配置のバランス計算が必要になっています。

1-3.住宅性能表示制度

2000年4月には品確法(住宅の品質確保に関する法律)が施行され、住宅性能表示制度が創設されました。建築基準法の耐震基準を満たせば「等級1」、耐震基準の1.25倍の強さなら「等級2」、1.5倍の強さなら「等級3」となります。中古住宅を購入するならば、この制度による認定を受けているかどうかがポイントの1つです。

2.中古住宅の耐震チェックポイント

中古住宅の耐震性能をチェックする方法にはどんなものがあるのでしょうか?この項では、専門知識がなくてもできる10の方法を紹介します。

2-1.できれば2000年以降の住宅にする

最低でも1981年6月以降に建築確認を取得した住宅、木造住宅だと、できれば2000年6月以降に確認を得た住宅にしてください。理由は、建物の耐震性能の項で説明したとおりです。
81年以前の旧耐震基準の住宅は、耐震性能が劣ると考えた方がいいと思います。マンションを購入する場合は、耐震診断を受けて現在の基準を満たしていると認められたもの、あるいは、耐震補強をしているものにしましょう。木造住宅の場合、81年から2000年までの住宅は、現在の耐震基準は満たしていますが、2000年以降の住宅に比べ、弱い可能性があります。

2-2.お墨付きの住宅は心強い

2000年以降にできた住宅だと、住宅性能表示制度に基づく耐震等級を受けている住宅もあります。確認してみてください。やっぱり等級1よりは2、3の方がおすすめです。
また、耐震診断をして耐震基準適合証明書をもらっている住宅なら、なおさらいいでしょう。住宅ローン減税を受けることができます。

2-3.地盤と基礎に気をつける

いくら住宅の躯(く)体が頑丈でも、地盤がよくないと被害を受ける可能性があります。埋立地などで生じる液状化被害などです。古地図や国土地理院の土地条件図などで、かつてどんな場所だったのかを調べるといいと思います。また、木造住宅では、基礎が布基礎やベタ基礎ならいいのですが、大きなひび割れがないかどうか確認しましょう。

2-4.どんな構法の住宅かを知ろう

コンクリート造のマンションには、ラーメン構造や壁式構造といった種類があります。一方、木造住宅は、柱と梁で支える軸組構造(在来工法)が一般的ですが、ほかには枠組壁構造(2×4工法)など。どんな構法(住宅の構成方法)なのかも見てください。一般的には壁式構造や枠組壁工法が地震に強いとされていますが、壁が多く開口部が軸組構造よりも少ないという難点があります。

2-5.正方形に近い住宅は強い

住宅の平面の形は、正方形のようにシンプルな形が地震には強くなります。L字型のように複雑な平面形だと、角の部分に地震エネルギーが集中し、被害を受ける可能性がありますから、注意が必要です。あまりに細長い住宅も、できたら避けるべきでしょう。正方形に近い住宅が安定していて地震に強いとされています。

2-6.トップヘビーの住宅は避ける

戸建ての中古住宅を購入される方は、屋根の材料にも注目すべきです。瓦屋根のように重い屋根材を使ったトップヘビーの住宅は、地震に弱い面があります。屋根材は、できるだけ軽い素材を使っている住宅を選んだ方が賢明です。

2-7.壁の量とバランスに注意

木造住宅は、壁の量が多ければ多いほど、地震に強い住宅になります。現在の耐震基準では、2階建ての住宅の場合、床面積1㎡当たり1階で29cm、15cmの壁が必要です。仮に床面積がそれぞれ50㎡だとすると、1階14.5m、2階で7.5mの壁が必要になります。
また、壁がバランスよく配置されているかも重要な視点です。中に入って、壁の量やバランスを見てください。あまりにも壁が少なかったり、バランスがよくなかったりすると、改造された可能性があります。

2-8.大規模なリフォームをしていないか

大規模なリフォームで、もともとあった壁を取り払い、広い空間にするケースがあります。この場合、耐震性能が低下している可能性があり心配です。ただし、壁が少なくても、筋かいを入れたり耐震金物を使ったりして補強していれば大丈夫。壁が取り払うようなリフォームをしているときには、補強をしているかも確認しましょう。

2-9.目でわかる劣化を把握する

現在の耐震基準に適合しているといっても、完成から年月がたつと、住まいは劣化してきます。柱が傾いて扉の開閉がしにくくなっていないか、外壁・内壁にひびが入っていないか、軒先のたわみはないかなどをチェックしてください。また、床下がシロアリの被害を受けていないかも確かめましょう。

2-10.地震を経験していないか

現在の耐震基準は、震度5強程度の揺れでも、ほとんど無損傷という設計です。しかし、何度も地震にあうと、耐震強度が低下していることも考えられます。完成してからこれまで、どんな地震がその場所であったか調べてください。

3.ホームインスペクションと耐震診断

専門知識がなくても、耐震性能について、ある程度のことは推測できます。ただし、限界があることはご理解ください。とても気に入った中古住宅が見つかった。購入したいけど、耐震性能が心配だ。そんなときは、ホームインスペクション(住宅診断)や耐震診断を受けてはいかがでしょうか?

3-1.プロが第三者の目で評価

ホームインスペクションは、診断のプロが第三者の立場で住宅の劣化状況、欠陥の有無、耐震補強すべき場所などを助言してくれます。ただし、目視が中心なので、ホームインスペクションにも限界はあるのは確かです。

3-2.詳細な性能が知りたければ耐震診断

もし、詳細な耐震性能を知りたい場合には、耐震診断を受けてください。古い建物の耐震性能を示す数値に、構造耐震指標(Is値)というのがあります。国土交通省が求めているIs値は0.6以上。0.3未満は、震度6程度の揺れで倒壊や崩壊の危険性が高いとされています。マンションだとIs値が0.6以上のものにしてください。

一方、木造住宅の構造耐震指標としてはIw値があります。地震の震動および衝撃に対して、倒壊または崩壊する危険性が低いとされているのは1.0以上。木造戸建て住宅の場合、耐震診断をしているのは少ないと思うので、購入する場合は、耐震診断をすることをおすすめします。

4.耐震性能をアップするリフォーム

耐震性能を高めるためのリフォームにはどんなものがあるのでしょうか。ここでは耐震、制震、免震の3つの方法を紹介します。

  • 耐震リフォーム:地震に耐えられるように住宅を強固に補強するリフォームです、戸建て住宅では、筋かいを入れた補強や、耐震金物、合板パネルなどを使って補強します。
  • 制震リフォーム:地震による揺れを制御して揺れを押さえるリフォームです。ダンパーという装置を筋かいに設置する方法などがあります。比較的低予算でできる方法です。
  • 免震リフォーム:建物と地盤の間に装置を組み込み、揺れが建物に伝わらないようにするリフォームです。費用はかかりますが、耐震性能は大きく向上します。

まとめ

中古住宅の購入を検討されている方のために、専門知識がなくても耐震性能をチェックする方法を紹介しました。チェックポイントは以下の10項目です。

  • できれば2000年以降の住宅にする
  • お墨付きの住宅は心強い
  • 地盤と基礎に気をつける
  • どんな構法の住宅かを知ろう
  • 正方形に近い住宅は強い
  • トップヘビーの住宅は避ける
  • 壁の量とバランスに注意
  • 大規模なリフォームをしていないか
  • 目でわかる劣化を把握する
  • 地震を経験していないか

価格も広さも立地も気に入って購入した。でも、耐震性能が不安というならば、耐震リフォームをしてはいかがでしょうか。お気に入りの中古住宅の耐震性能が低くても、必要な補強をすれば、耐震性能はアップします。ただし、耐震性能を高めるリフォームでは、不要なものまで設置し、耐震性能の向上には役立たない工事をする会社も横行しているようです。専門の知識をもち、実績のある会社を選んでください。