耐震補強工事の費用はいくら? 工事内容と種類をチェックしよう!

東日本大地震以降、住宅の耐震補強工事が注目されるようになりました。しかし、耐震補強工事の種類によって費用が異なるため、いくらかかるのか、どんな方法があるのか気になっている方が多いでしょう。まずは、耐震補強工事について知識をつけることが大切です。

本記事では、住宅の耐震補強工事の内容とポイント・費用を解説します。

  1. 住宅の耐震補強工事で知っておきたいこと
  2. 耐震補強工事が必要な住まいは?
  3. 住宅の耐震補強工事の種類は?
  4. 住宅の耐震補強工事はいくらかかるのか?
  5. 住宅の耐震補強工事に関してよくある質問

この記事を読むことで、住宅の耐震補強工事についてよく分かります。検討している方は、ぜひチェックしてください。

1.住宅の耐震補強工事で知っておきたいこと

まずは、住宅の耐震補強工事がどのような内容なのか、基礎知識を把握しておきましょう。

1-1.地震に強い建物にする工事

弱くなっている基礎部分にコンクリートや鉄筋で幅を厚くする・壁を増やすなど、地震に強い建物にするための工事が耐震補強工事です。日本は地震活動が活発的な位置にあり、阪神淡路大震災や東日本大震災など、さまざまな大地震を経験してきました。そのたびに、耐震基準が更新され、補強工事を行う家庭や企業が増えています。また、耐震補強工事にもさまざまな種類があり、現状の建築物にあわせてベストな工事内容を選択することが大切です。

1-2.地震の被害を抑えるために必要

首都直下地震や南海トラフ巨大地震などの巨大地震が、近い将来にも高い確率で起こると予測されています。大地震はいつ起きるか分からないため、できるときに耐震リフォームを行わなければなりません。耐震リフォームを行うことで、大災害による被害を最小限に抑えることができます。今からできる備えの1つとして、耐震リフォームは有効な手段といえるでしょう。

1-3.耐震補強工事の現状と問題点を知ろう!

耐震補強工事は、まだ十分には進んでいないのが現状です。平成23年9月~平成27年3月に、耐震性を備えていないと判断された建物のうち、耐震補強工事を行ったのは、そのうちの約28%だけでした。耐震補強工事は高額な費用となるため、安易に工事を行うことができないのでしょう。状況によって異なりますが、耐震補強工事の費用は数百万円かかるケースがほとんどです。工事費用が高いという問題点はありますが、補助金制度などを利用して費用を抑える方法があります。また、早い段階で補強しなければどんどん状況が悪化し、さらに費用が高くなりがちなので注意が必要です。

2.耐震補強工事が必要な住まいは?

ここでは、耐震補強工事が必要な住まいの特徴を紹介します。

2-1.耐震基準前の木造住宅

木造住宅は、コンクリートや鉄筋でできた建物よりも地震に弱い傾向があります。特に、耐震基準前に建てられた木造住宅は、大地震で倒壊する恐れがあるので早めに補強工事を行わなければなりません。新耐震基準と旧耐震基準のターニングポイントは、1981年6月1日です。その日以前に建てられた住宅は、旧耐震基準なので補強する必要があります。

2-2.耐震診断でチェックしよう!

自分の家が耐震補強工事をすべきなのか知りたい方は、リフォーム業者などに耐震診断を依頼してください。耐震診断は、既存の建築物の構造的強度を調べるものです。診断方法は、第1次・第2次・第3次診断に分かれています。

  • 第1次診断:比較的、耐震壁が多く配置された建築物の耐震性能評価が目的
  • 第2次診断:柱・壁など鉛直部材の破壊が先行する建築物の耐震性能評価が目的
  • 第3次診断:柱・壁の強さと粘りに加え、梁(はり)を考慮した診断

また、簡単な耐震診断なら自分でも可能です。自分でチェックする際は、一般財団法人日本建築防災協会のホームページに記載されている「誰でもできるわが家の耐震診断」を参考にしてください。

2-3.増築した住まいも耐震補強が必要

建築基準法を守っていない違反建築物や、違法な増改築をくり返した建物も耐震補強工事が必要です。特に、もとの住まいと増築した部分の接合部分は、もろい傾向があります。その部分をきちんと補強しておかなければ、せっかく増築した部分を失ってしまうことになるでしょう。

2-4.基礎のヒビ・傾きなどが気になる

基礎部分にヒビができている・家が少し傾いている・地盤が弱い場合も、耐震補強工事を行ってください。建物の経年劣化によって基礎部分や外壁に入ったヒビは、建築物の耐久性を大きく左右することになるのです。また、放置するほど症状が進行し、補修工事の費用もかさばります。気になったときには、すぐに耐震診断を行い補強しましょう。

2-5.ピロティ・吹き抜けがある

1階部分が柱だけで壁のないピロティになっている建物・1階部分が店舗でガラスの面が多く取ってある建物なども、耐震補強工事を行う必要があります。ピロティ・吹き抜けになっている空間には支えるものが何もありません。支えがない場所はもろく、地震に弱いので補強を行わなければならないのです。

2-6.ほかにも気をつけておきたい建物

ほかにも、床下にシロアリ被害がある建物・間口いっぱいに開口が取ってある都市型住宅なども、耐震補強工事が必要といえるでしょう。前述した「誰でもできるわが家の耐震診断」をチェックし、どのような箇所に地震に対する強さや弱さのポイントがあるのか、ぜひ確かめてみてください。

3.住宅の耐震補強工事の種類は?

住宅の耐震補強工事には、さまざまな種類があります。工事を行う箇所別に、それぞれの特徴を見ていきましょう。

3-1.基礎の補強

建物を支える重要な基礎がしっかりとしていなければ、地震に耐えることができません。基礎部分にヒビが入っている場合は、そのヒビを埋めるための補修を行います。基礎部分をより頑丈にするため、無筋コンクリートと鉄筋コンクリートを一体化させる方法も1つの手段です。有筋基礎にする前に、ヒビ割れの補修を優先します。

3-2.屋根の軽量化

重量がある屋根は、地震で建物が揺れたときに倒壊しやすくなるので軽量化する必要があります。特に、昔ながらの日本家屋に多い日本瓦の屋根は、軽量な材質のものに取り換えるだけで耐震性がアップするのです。屋根の軽量化は、有筋基礎よりも優先すべき補強工事となります。

3-3.外壁のヒビ補修・耐力壁の追加や補強

外壁にヒビができている場合は、モルタルなどで埋め補修する必要があります。また、壁を頑丈にするため、耐力壁の追加と補強も行うことが大切です。特に、建物の壁が水平荷重に弱い間仕切り壁の場合は、耐力壁という抵抗力の強い壁に換えます。耐力壁とは、筋交いや構造用合板を取りつけて補強する方法です。

3-4.結合部の補強

ホゾ抜け防止金具(柱頭・柱脚)の設置など、接合部の補強も必要な工事です。接合部を補強するだけでも、建物の耐震性を上げることができます。柱や土台は、建物を支えるために必要な箇所なので、耐震用金具を使い耐震性を上げましょう。

3-5.腐朽箇所の修繕

建物の土台や柱が腐朽したり、シロアリの被害を受けたりしていると、耐震性が下がってしまいます。この場合は、土台の入れ替えや柱の根継ぎなどで修繕を行うことになるでしょう。柱全体を入れ換えず、腐っている部分にだけ新しい材料を使う方法です。また、新しく使用する材料には、シロアリの被害を防ぐため、防蟻(ぼうぎ)処理を行う必要があります。

4.住宅の耐震補強工事はいくらかかるのか?

住宅の耐震補強工事は、どのくらいの費用がかかるのでしょうか。費用の目安と補助金についても解説します。

4-1.耐震補強工事の平均費用は約150万円~

築年数・床面積・状態によって費用は大きく異なりますが、耐震補強工事の平均費用は約150万円~です。たとえば、築年数が20~29年で60~80㎡の場合、約130万円かかります。同じ床面積で築年数が40年以上経過している場合は、200万円~と高額になりがちです。築年数が増えるほど、補強すべき箇所がたくさんあるので費用がその分かかることになるでしょう。

4-2.補助金を利用しよう

国や自治体で提供されている耐震補強工事の補助金制度があります。たとえば、横浜市の場合、耐震改修工事の限度額が105万円、非課税世帯の場合は145万円が補助されるのです。補助金を受けるための条件は、市民税・固定資産税など税金に滞納がないこと・木造軸組工法で2階建て以下など、それぞれの自治体で異なります。事前に確認してから申し込みをしてくださいね。

4-3.業者選びのポイント

正しい耐震補強工事が行えるか否かは、業者選びにかかっています。業者選びの際は、耐震リフォームに関してどのような実績があるかを必ず確認してください。実績がある業者は、さまざまな建物の耐震リフォームを行ってきているのでより適切なリフォームプランを提示してくれるでしょう。また、無料相談や無料見積もりができるか・見積内容が細かく記載しているか・丁寧に説明してくれるかも要チェックです。耐震リフォームは、担当者との打ち合わせが増えるため、担当者との相性も重要な要素となります。親身になって話を聞いてくれるか、相性がいいかどうかも確認したほうがいいでしょう。相性が悪い担当者の場合、後でトラブルになる恐れもあるので注意してくださいね。

5.住宅の耐震補強工事に関してよくある質問

住宅の耐震補強工事に関してよくある質問を5つピックアップしてみました。

Q.新耐震基準と旧耐震基準の大きな違いは?
A.新耐震基準は、大地震が起きても人命にかかわる甚大な被害が出ないことを目的とした基準です。具体的には、震度6強から7に達する大規模地震で倒壊・崩壊しないこと、震度5強程度の中規模地震でほとんど損傷しないことがあります。これらの大規模地震に関する基準は、旧耐震基準にはありませんでした。

Q.耐震・制震・免震の違いは?
A.耐震は壁や柱などの強度を上げ、建物を振動に耐えられるようにすることです。一方、制震は地震のエネルギーを吸収する装置を建物に設置することで、建物の揺れを抑え倒壊を防止します。免震は、基礎となる地面と建物の間に免震装置を設置し、地盤と建物を切り離し地震の揺れを建物に伝えないようにする方法です。より強い建物にしたい方は、耐震リフォームがいいでしょう。

Q.部分的な補修はできるのか?
A.建物の状況によっては、部分的な補修でも耐震補強ができるケースがあります。たとえば、外壁・基礎のヒビ割れが大きく広がっていない場合は、最小限の工事で補強できるでしょう。できるだけ費用を抑えたいなら、早めの補修・補強を行うことが大切なのです。部分的な補修で済ませられるよう、不安な点があれば早めに業者へ調査を依頼してくださいね。

Q.100万円以下でできる耐震工事は?
A.1間の壁に筋交いを設置するだけなら、約25万円で済みます。相場としては、壁0.5間に対し10万~15万円程度です。また、木造住宅に耐震金物を取りつけるなど構造部の接合部分を強化する工事なら、約40万円で行うことができるでしょう。土台と柱の結合を強化する場合は、耐震パネルを取りつける作業で約65万円となります。ただし、費用を第一に優先して耐震工事を行うのはNGです。たとえ、費用が100万円以上かかったとしても、建物の状態に合った工事を行ってください。

Q.気をつけておきたいリフォーム業者の特徴は?
A.きちんとした耐震診断を行わずに、すぐ診断結果を出す業者は注意が必要です。診断日当日に工事を始めようとしたり、恐怖心をあおったりしてくるような業者には依頼しないようにしてくださいね。また、アポなしに急に訪問し、「今すぐに耐震リフォームをしたほうがいいですよ」「今なら費用が安くなります」など謳(うた)い文句を口に出す業者にも注意しましょう。

まとめ

いかがでしたか? 大地震がいつ起きるか分からないからこそ、できるときに耐震補強工事を済ませておく必要があります。特に、1981年6月以前の旧耐震基準で建てられた建造物や海・川・沼など地盤が弱い地域の場合は要注意です。まずは、リフォーム業者などに地盤・建造物の調査を依頼し、最適な耐震補強工事を行いましょう。費用がいくらかかるのかも、細かく確認することが大切です。