耐震診断とは? 内容や利用できる補助金制度など知っておきたいポイント

「耐震診断ってどんな診断なの?」「地震に強い建物か診断してもらう方法は?」など、耐震診断に疑問を持っている方は多いでしょう。いつ起きるか分からない地震だからこそ、できるときに耐震診断は行っておきたいものです。耐震診断の結果によって、耐震補強のために補助金制度を受けることもできます。

本記事では、耐震診断の内容などについて解説しましょう。

  1. 耐震診断とは?
  2. 耐震診断の内容をチェック!
  3. 耐震診断で利用できる補助金制度
  4. 耐震診断を依頼する方法は?
  5. 耐震診断に関してよくある質問

この記事を読むことで、耐震診断のやり方や依頼方法などが分かります。気になっている方はぜひチェックしてください。

1.耐震診断とは?

まずは、耐震診断がどのような診断なのか基本情報をチェックしておきましょう。

1-1.新耐震基準で耐震性の有無を確認すること

耐震診断を簡単に説明すると、現行の構造基準となる新耐震基準で耐震性の有無を確認することです。耐震診断の対象となる建物は、既存の建築物かつ旧耐震基準で設計され耐震性能を保有していない建物となります。旧耐震基準で建てられた建物は、新耐震基準を満たしていない建物強度なので震度6強~7の大地震が直撃すると倒壊してしまう危険性が非常に高いと言われているのです。昭和56年6月以前の建物は旧耐震基準で設計されている可能性が高いため、当てはまる建物は耐震診断を行う必要があります。

1-2.耐震基準は建築基準法によって定められている

耐震診断の基準となる耐震基準は、建築基準法によって定められています。建築基準法は発生した大地震などの災害が起きるたびに何度も改正されているのです。特に、大きな改正のきっかけになったのが、阪神・淡路大震災となります。阪神・淡路大震災ではたくさんの家屋が倒壊しました。旧耐震基準で建てられた建物がほとんど倒壊したため、国も旧耐震で建てられた建物の耐震かを推進しています。東北大震災や熊本地震が起きた後も強化を重ねているのです。

1-3.耐震診断で補強すべき箇所が分かる

地震に強い建物にするためには、現在、建物がどのような状態なのか把握しておかなければなりません。適切な補強を行うためにするのが、耐震診断なのです。基本的に、耐震診断は一般耐震技術認定者という認定者だけが行います。耐震技術認定者は診断の際に必ずネームプレートを所持しているので確認するといいでしょう。資格を有した者が耐震診断を行うことで、どの箇所にどのような補強をすればいいのか判断します。

2.耐震診断の内容をチェック!

それでは、耐震診断の内容を解説します。

2-1.耐震診断レベル判断の材料となる予備調査

まずは現地調査の前に予備調査を行います。予備調査では、建物の概要・使用履歴・増改築・経年劣化・設計図書の有無などの内容を確認することになるのです。そして、耐震診断のレベル判断を行います。建物がどのような意図で使われてきたのかチェックすることで、どのくらい劣化しているのか大まかに判断できるのです。予備調査で必要な書類は、事前に用意しておくとスムーズな診断ができるでしょう。

2-2.実際に建物をチェックする「現地調査」

予備調査の後は、実際に建物をチェックする現地調査に入ります。現地調査では、現地での目視調査はもちろんのこと、設計図書の内容や建物修繕履歴などを確認しながら状態をチェックするのです。現地調査の時間は約2時間となります。屋外・屋内だけでなく、床下や天井裏に入ることもあるでしょう。ちなみに、調査を行う項目は壁の材質・屋根の重さ・劣化状況などさまざまです。診断レベルによっては、基礎・地盤、部材寸法や配筋状況、コンクリート強度試験などの調査も行うことがあります。

2-3.最も簡単な方法の1次耐震診断

耐震診断を大きく分けると1~3次の3段階があります。中でも、最も簡単な耐震診断が1次耐震診断です。各階の柱と壁の断面積やその階が支えている建物の重量から計算します。1次耐震診断は、設計図面が残っていれば詳細な調査を行わなくても短時間で計算可能です。柱と壁の水平断面積や各階における開口の大きさや壁の水平断面寸法が必要となります。図面がない場合は、すべての寸法を測定しなければなりません。また、1次診断の結果で補強設計を的確に行うことはできないため、補強工事を考えている方は2次診断も行う必要があります。

2-4.耐震補強設計~工事を行うために必要な2次耐震診断

2次耐震診断は、各階の柱と壁のコンクリートと鉄筋の寸法から終局体耐力を計算します。つまり、その階が支えている建物重量と比較する計算方法です。そのため、コンクリートの圧縮強度・中性化等の試験・建物の劣化状態などの調査が必要となります。1次診断よりも結果の信頼性が高いので、1次診断と併せて2次診断を行うケースがほとんどでしょう。2次診断の結果によって、耐震補強設計をすすめて実際に工事を行います。

2-5.計算の難易度が非常に高い3次耐震診断

3次耐震診断は、2次耐震診断で行う柱と壁に加えて梁も考慮して計算するのが特徴です。現行建築基準法の保有水平耐力計算と同じ程度のレベルで建物の終局耐力を計算することになります。梁の破壊や壁に回転で耐震性が決まる建物の耐震診断を行うときに採用されることが多いでしょう。計算の難易度は非常に高いため、診断士の技術や能力が問われる傾向があります。

3.耐震診断で利用できる補助金制度

ここでは、耐震診断で利用できる補助金制度を紹介します。

3-1.各自治体で補助事業が実施されている

全国のほとんどの自治体では、耐震診断による補強設計や耐震改修工事の補助事業などが実施されています。補助金の内容や条件は各自治体で異なるため、ホームページ等を確認してください。たとえば、東京都の場合は「特定沿道建築物」という条例が平成24年4月1日より義務化されました。また、建物の規模などによって、数万円から数百万円の補助を受けられることがあります。いずれにせよ、補助金制度を受けるためには耐震診断が必要不可欠です。

3-2.税制上の特典が受けられる制度もある

耐震改修促進法によって規定される特定建築物においては、耐震改修工事の税制上の特典が受けられる制度があります。耐震改修促進法とは、地震による建築物の倒壊や被害などから国民の生命、身体および財産を保護するのが目的です。また、建築物の地震に対する安全せいの向上を図る・公共の福祉の確保に資することも目的としています。また、特定建築物とは、事務所・百貨店・ホテル・賃貸住宅など一定規模以上の建物のことです。

3-3.耐震診断によって補助金交付の要件が異なる

自治体によって補助金対象の条件は異なりますが、一般的には築年数・建物の構造・建物の用途によって決まります。それぞれの大まかな要件は以下のとおりです。

  • 築年数:昭和56年5月31日までに建物確認を受けた木造住宅
  • 建物の構造:木造輪組み工法で2階建て以下の建物
  • 建物の用途:戸建て住宅(賃貸住宅の場合は所有者が耐震診断をすること)

4.耐震診断を依頼する方法は?

では、耐震診断を依頼する方法とポイントを解説します。

4-1.専門家に耐震診断を依頼する

外壁塗装やリフォーム工事を行っている業者の中には、耐震診断を実施しているところがあります。一般的に、耐震診断は専門家に依頼するケースがほとんどです。セルフチェックでもできますが、主観や目視だけでなく専門的な視点から調査することで適切な補強工事ができます。耐震診断を行っているか、インターネットで検索するといいでしょう。住宅の耐震性をしっかり評価してもらいたい場合は、ホームインスペクター(住宅診断士)の資格を持つ専門家に依頼してください。耐震診断は建築士のような専門の知識と経験が必要になるため、慎重に選ぶことが大切です。

4-2.耐震診断費用は約5万~10万円以上

業者や耐震診断の内容によって異なりますが、大まかな費用は約5万~10万円以上が相場でしょう。建物面積が100㎡(30坪)程度の耐震診断で1次診断を依頼すると約5万~6万円かかります。専門の機材を使用した詳細診断になれば10万円以上かかる可能性もあるので要注意です。業者に依頼する前に、見積書で内訳をきちんと確認してください。なお、耐震診断の所要時間はおよそ2~3時間です。

4-3.地域差や事務所の方針によって費用が高くなることも

耐震診断の費用は、地域差や事務所の方針によって費用が高くなる可能性もあるので注意してください。たとえば、一級建築士が運営している事務所に依頼すると木造住宅の場合、延べ床面積120㎡あたり20万~50万円程度が相場とされています。ただし、ある建築士事務所では簡易診断で100万円かかることもあれば、200万円以上の費用がかかるケースもあるので注意しましょう。

5.耐震診断に関してよくある質問

耐震診断に関する質問を5つピックアップしてみました。

Q.耐震診断の現状は?
A.国全体が耐震化を推奨しているのにもかかわらず、なかなか住宅の耐震化がすすんでいないのが現状です。耐震診断が注目されていますが、実際に工事まですすんでいるケースは少なく進展していません。その理由として、災害のイマジネーションの低さが原因にあると言われています。さまざまな条件を踏まえた上で、発災からの時間経過に伴い自分のまわりで起こる状況を具体的に想像することができないのです。また、適切な技術と制度の整備も整っていない傾向があり、耐震化に高額なお金がかかる点も進展しない大きな原因となっています。

Q.精密診断法と一般診断法の違いは?
A.精密診断法は必要に応じて、天井や壁などを剝がして内部の構造を確認するより細かい診断方法です。一方、一般診断法は住宅の外観や軒下・天井裏の非破壊での目視による診断法となります。より精密に住宅の耐震性を調べたい方は、精密診断法がおすすめです。解体道具や補修用工具のほかに、多くの道具が必要になるので作業時間や費用が高くなりますが、建物全体の耐震性を徹底的に調べることができるでしょう。

Q.特定建築物の所有者で注意しておきたいことは?
A.特定建築物の所有者は、建築物が新耐震基準と同等以上の耐震性能を確保するために、耐震診断や耐震改修に努めることが義務付けられています。一定規模以上の建築物が特定建築物になるので補修工事期間が長く費用も高くなりますが、公的融資の優遇などを受けられるなど緩和措置等も規定されているのです。

Q.耐震補強の補助金申請で必要なことは?
A.補助金を申請するためには、補強計画の事前調査が必要不可欠となります。行政による耐震診断を行った後に、補強計画の設計書・計画書の作成を行わなければなりません。補助金申請手続きが無事にとおった後は、交付決定や工事契約が行われる流れです。すべて工事が終了したら、代金を支払い完了報告書と耐震審査を行った後に、最終的に補助金が受け取られる形となります。

Q.耐震診断の大まかな流れは?
A.耐震診断の大まかな流れは以下のとおりです。

  1. 予備調査
  2. 設計図書がある場合は診断レベルの設定へ
  3. 設計図書がない場合はそのための調査を行い診断レベルの設定へ
  4. 1次調査・2次調査または2次調査+精密診断を行う
  5. 経年指標や材料強度などの設定後、耐震診断に必要な数値を示す
  6. 耐震診断計算の実施
  7. 調査資料を踏まえ、総合的な耐震性の評価を行う

具体的な流れは建物の状態や業者によって異なるため、事前に確認しておきましょう。疑問点や不安要素がある場合は、契約を交わす前にしっかり確認することが大切です。悪徳業者に引っかからないためにも、複数の業者を比較して優良業者と悪徳業者を見極めましょう。

まとめ

東北大震災や熊本地震など、日本は地震大国です。だからこそ、できるうちに耐震診断を行い、建築物の耐震性を把握しておかなければなりません。耐震診断で十分な耐震性になっていない場合は、耐震改修工事を行う必要があります。現行の耐震基準と比較して判定を行うことで、大地震時における耐震安全性を確保することができるでしょう。耐震診断によっては補助金制度が利用できるので、各自治体や国土交通省のホームページをチェックしてみてください。